2016年10月28日金曜日

嫌われる勇気


スティーブ・ジョブス

岸見一郎・古賀史健 著「嫌われる勇気―自己啓発の源流アドラーの教え」(ダイアモンド社)を読みました。
本の解説文には次のようにあります。

「あの人」の期待を満たすために生きてはいけない――
【対人関係の悩み、人生の悩みを100%消し去る〝勇気〟の対話篇】
世界的にはフロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨匠とされながら、日本国内では無名に近い存在のアルフレッド・アドラー。「トラウマ」の存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、対人関係を改善していくための具体的な方策を提示していくアドラー心理学は、現代の日本にこそ必要な思想だと思われます。

  私自身これまで自己啓発なるものに関心を持ったことは無く、アドラーの名前も知らなかったのですが、数年前旅行先で何気なく立ち寄った本屋さんに平積みで陳列してあり、帯にあった人気作家の伊坂幸太朗氏による以下のような推薦文が目に止まりました。

「自由とは他者から嫌われることである」

 この本には、僕が今まで小説を書きながら考えていたこと、知りたかったことがたくさん、書かれていました。たくさんのはっとさせられる言葉にうなずかされ、もしくは、驚かされ、何より読み物として面白くて、だんだんと純粋に小説を読んでいる気分になり、最後にはなぜか泣いていました。

 この本にあるアドラーの教えに100%同意出来た訳ではありませんが、腑に落ちる部分は数多くありました。本書に繰り返しでてくるフレーズに、「課題の切り分け」があります。自分の課題と他者の課題を区別して自分の課題に集中し、他者の課題に踏み込こまない、ということです。自分自身こういうことは分かっているようでいて、実際には分かっておらず、それが原因で無駄に思い悩んでしまうことが多かったように感じます。アドラーのこの主張は、イチローや松井秀樹が言っている「自分がコントロール出来ないことには関心がない」(記録を競っている他チームの選手の成績は気にしない、というようなこと)に通じるところがあります。また、これに似たことは、アップル創業者スティーブ・ジョブスが行ったスタンフォード大学の卒業式でのスピーチにも出てきます。ジョブスのスピーチでは、「Stay Hungry, Stay Foolish(ハングリーであれ、愚か者であれ)」があまりにも有名で、ジョブスファンの私の頭の中には、彼のこの声がいつもこだましているのですが、スピーチの内容は大きく分けて三つあります。一つ目は「点と点をつなげる」、二つ目は「愛と敗北」、三つめは「死」です。アドラーやイチロー、松井の主張に似ているのは三つ目の話に出てくる以下の部分です。

Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.

あなたの時間は限られている。だから誰か他の人の人生を生きることに時間を使うのは止めなさい。何かの原理に捉われることも止めましょう。そうしないと、他の人が考えたことに頼って生きることになりますよ。他人の意見の雑音のせいで、自分の内なる声を聞き漏らさないように。そして一番大切なことは、あなたのこころと直感に従う勇気を持ちなさい。それらはあなたが本当になりたいものを既に知っているから。他のことはすべて二の次です。

アドラーの本を読んで私は伊坂さんのように泣けませんでしたが、ジョブスのスピーチには泣けました。彼はこのスピーチの六年後に亡くなります。

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